歯茎の腫れや赤みも決して軽視できないSOSサインの症状の1つです。今回は歯茎の腫れから考えられる主な原因を幅広く取り上げながら、原因の1つである「歯の破折」についての解説と予防方法をお伝えしていきます。
同居犬とのケンカで?
歯茎の腫れや赤みに気が付いて来院される方々のきっかけは実に様々で、「口臭がするので口の中を覗いてみたら…」「ハミガキをしていたら…」というケースや、「なんだか最近食欲がなくなっているようで…」と他の要因で来院されたワンちゃんのお口の中を獣医師が覗いて発見に至るケースもあります。
他にも「同居犬とケンカしたのか、目の下が腫れている」「目の下にかさぶたができている」と、ケンカが原因と思ってしまうほどにまで腫れが極度に進行している子や顔面から膿が出ている状態(外歯瘻)など、外見上の症状が出るまで歯茎の腫れや赤みに気が付かず来院に至らないケースも少なくありません。
歯茎の腫れ、赤み(1)
歯茎の腫れ、赤み(2)
歯茎の腫れ、赤み(3)
外歯瘻(1)
外歯瘻(2)
歯茎の腫れや赤みの主な原因
原因その①歯周病とは?
歯周病とは、歯肉炎および歯周炎のことを指します。
歯肉炎は歯肉のみの炎症ですが、歯周炎は歯肉だけではなく見た目ではわからない歯周組織まで炎症が及んでいる状態で、全身麻酔下で行う歯科処置(スケーリング・ルートプレーニング・ポリッシング)などが必要となります。また目に見えない炎症は発見が遅くなりやすいため、歯茎の腫れや赤みに気が付いて来院された時には既に歯周病が酷く進行してしまっていることも多くあります。
軽度歯周病
中度歯周病(1)
中度歯周病(2)
中度歯周病(3)
原因その②大型犬に多い「歯肉増殖症」とは
歯肉増殖症(1)
歯肉増殖症(2)
歯肉増殖症(3)
歯肉増殖症(4)
原因その③歯の破折はそのままで良い?
「ひづめを与えたら歯が欠けてしまった」「牛皮をあげたら歯が折れてしまった」という診察のご相談は定期的にありますが、歯の破折は固いおもちゃや石、木をかじって起こることもありますのでお散歩中に石ころを咥えたりする子も十分注意が必要です。
他にも乳歯から永久歯への生え替わりの時期に、家具やケージを噛んでしまい破折が起こるケースもあります。乳歯であっても破折後に根が残ってしまうと永久歯に問題を起こし、抜歯に至ることもあるため緊急処置が必要となります。このような時期はデンタルロープを与えてあげるなど破折の予防に努めて下さい。
また中には「歯が欠けてしまったがかかりつけの病院でそのままにしていて良いと言われた」「欠けた歯をくっつけてもらったが取れてしまった」という事例も耳にすることがあります。しかしながら破折した部分から感染を起こして、歯の根っこの先端(根尖)に炎症を起こす恐れもあるので、いち早く処置内容について診察する必要があります。食欲の減退や顔の腫れなどの症状が出るまで気が付かないケースもあるかと思いますが、時間が経過していてもいなくても、破折に気が付いた時点で処置ができる動物病院に相談するようにしましょう。
破折(1)
破折(2)
デンタルガムの選び方
歯茎の腫れの原因の一つである歯の破折のきっかけとなりうる「ひづめ」や「牛皮」をデンタルケアとして与えている話はよく聞きますが、これらは硬すぎるためデンタルケア製品としてお勧めできません。デンタルガムを選ぶうえで大切なポイントは2つです。
爪でぐっと押して、跡がほんのり残る程度のものが最適です。
長く噛むことで奥歯の汚れを落とすことができます。院内犬のミニチュアダックスフンドは4分51秒かけて噛んでいました。
ここで当院で取り扱い、実際患者様にご好評頂いているデンタルガムを2つご紹介します。
◎柔らかめで、シニアやあまり硬いものを好まないワンちゃんにオススメです。
<犬用>適度な弾力性と大きさで長く噛むことができ、
しっかりと長く噛むことで奥歯の汚れを落とすウィングエッジ構造になっています。
XS(2~5kg) S(5~10kg) M(10~20kg)
歯周病菌に対して優れた抗菌力を持つ、明日葉抽出物が配合されており、
ワンちゃんの大好きなミルク風味で、米、小麦、とうもろこしは不使用です。
◎信頼のVOHC認定デンタルガムです。
<犬用>体重毎に4サイズに分かれています。
VOHCマークがついており、米国でも歯石への予防効果が認められている商品です。
奥歯で噛むことによって歯垢を除去することができます。
また、アレルゲンとなりやすい小麦・牛肉・乳は不使用です。
フレッシュテクノロジーにより口腔内と腸内の健康を維持してくれるので口臭の軽減に役立ちます。
1日1本を目安として、奥歯のハミガキがなかなか上手くいかない子やハミガキ自体難しい子、
ハミガキの際の特別なおやつとして、オススメです。
XS(~5kg) / S(5~10kg) / M(10~30kg) / L(30kg~)
最後に
今回は歯茎の腫れや赤みという症状から考えられる原因をいくつかご紹介させて頂きました。いずれの原因も、適切な日頃のデンタルケアによって防ぐことのできるものばかりです。しかしながらワンちゃんはデンタルケアが苦手な子も多く、諸症状の予防はおろか、口腔内の異常に早い段階で気が付くことはなかなか難しいかもしれません。
デンタルケアはハブラシの使用が最も理想的ではありますが、ご紹介したガムの他にも歯茎に塗るだけでも効果のあるデンタルジェルや、飲み水に混ぜるタイプのデンタルケアリンスなど様々な方法がありますので、このコラムをきっかけにぜひできることから始めてみて頂ければ幸いです。また適切な処置やケアを行うことで愛犬の健康寿命を少しでも長くし、ペットライフがより豊かなものになることを心よりお祈りしております。